日本の宝・美しい辺野古を守ろうとした鳩山政権がつぶされた経緯

 

(矢部)これは、このチャンネルをご覧の方はよくご存知でしょうが、普天間基地ですね。

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沖縄の普天間基地
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沖縄上空で毎日繰り返される米軍機低空飛行
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沖縄の街中を低空飛行する米軍機

 

(矢部)この町のど真ん中にある非常に危険な米軍基地を、沖縄県以外に移転させるという公約が挫折したことで、鳩山首相は退陣に追い込まれました 。
米軍機は、こういう無茶苦茶な低空飛行をしている。真栄原という繁華街をこんな風に飛んでいるわけですね。

(高野)マンションの屋根に引っかかるんじゃないかと思うね。

(矢部)これが沖縄(本島)ですね。

沖縄本島の約18%を占める米軍基地

 

(矢部)米軍基地が集中している日本の最南端の島です。このように、島の面積の約18%が米軍基地になっている。赤いところは海兵隊で、青は空軍の基地ですね。青は主に嘉手納(かでな)空軍基地とその北側にある嘉手納弾薬庫というところになります。

(高野)この本では、この沖縄にある米軍基地を全部写真に撮ったと?

(矢部)全部です。

(高野)アメリカの警備兵に追っかけられることはなかったですか?

(矢部)車でつけられたりはしましたが、何かをされるということはありませんでした。
先日、元外交官の孫崎さんとしゃべっていたら、孫崎さんはロシア勤務だったから、(当時)ロシアからモンゴルの基地を調べに行こうとしたイギリスの武官が十字路で、三方からトラックにぶつけられてぺちゃんこにされたというお話を聞きました。だから、「最初にこの本を見た時には(よくそんな危険なことが出来たなと)驚いた」って言われたんです。
沖縄には、たとえば「ドライブイン嘉手納」とか、基地の前に写真を撮れるような場所があるんですよ。
皆、4階のデッキから、望遠レンズで基地や軍用機の写真を撮っていますので、あまりそういう危険は感じませんでした。

(高野)普天間にもそういう展望台みたいなところがありますし。

(矢部)このチャンネルは外国の方も観ていると思うので、沖縄のある場所を地図にしておきました。普通とは反対から見た地図になっています。30年前に、日本人にこういう地図の見方を教えたのが、実は高野さんなんですよね。

地球儀を横にして見た日本の位置づけ

 

(鳩山)ぱっと見て、どこに日本があるか分からないかもしれませんよね。

(矢部)この角度から見ると全然違う風景が見えますよね。結局、中国の心臓部から太平洋に出る航路の真ん中にあるのが、沖縄という島だということですね。

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鳩山元首相「普天間基地の徳之島移設案」/朝日新聞2010年4月7日付

 

(矢部)次は、一番印象的な鳩山政権崩壊の始まりのシーン、2010年4月6日です。
鳩山さんがずっと温められていた腹案、徳之島移設案〔註:普天間基地を隣の鹿児島県に属する徳之島に移設するという案〕を外務省と防衛省の幹部たちに示した。案そのものは数日前に閣議で発表されていたわけですけれども、その実現に向けて本格的に始動するということで、(鳩山さんは)官邸に外務省と防衛省の幹部2人ずつを呼んで、最終方針「徳之島移設案」を伝えた。そして、最後の切り札を示して「このメンバーを中心に最終的な案を作ってもらいたい。ついては、こういう話し合いが外に漏れることが一番ダメージが大きい。とにかく秘密を厳守し、お互い知恵を出してやってほしい」と言った。すると翌日(7日)、朝日新聞の夕刊にその記事が出た。
この時のことを少しお話しいただけますでしょうか。

(鳩山)5月末までに決めなくてはいけないという期限を設定していました。しかも、3月末までは予算の仕事でほとんど時間を取られてしまって動けなかった。4月に入って「いよいよだな」ということで、防衛省と外務省から幹部2名ずつ来てもらって、官邸の中でお酒も出したんですよ。

(矢部)官邸の中でお酒をふるまった。

(鳩山)そうです。そして、「ぜひこの計画を実現したい。そこで一番大事なことは、このメンバーが互いに情報交換しながら、それを外部に漏らさないことだ」「外に漏らした瞬間に、こうした話は成就しなくなる恐れがあるから、そこだけは気を付けてくれ」と言った。すると、皆、「分かりました」と言って、上機嫌になって、「これから頑張りましょう」という感じで別れたわけですよ。
だから、その時は、私としては、「これは期待できそうだ」という気持ちを持ちました。そしたら、翌日、「夕刊に(鳩山政権のトップシークレット・徳之島移設計画案が)載っていますよ」という話で、びっくりしました。

(矢部)すごいショックだったと思うんですが、その時の気持ちは?

(鳩山)要するに「誰も信じられなくなったな」と。自分が一番やりたいことを一番の腹心だと思っている人間たちに伝えたら、それがすぐに裏切られたという話ですから。「このメンバーには、もう頼れない。交渉も頼れないな」と感じたし、「うまくいきそうもないな」と。「明らかに内部で、私の計画をつぶそうと考えている人間がいるな」という風に感じました。

(矢部)精神的なダメージは非常に大きかったですか?

(鳩山)大きかったですね。

(矢部)面従腹背という言葉があるんですけれども、面従している時間が短か過ぎますよね。

(高野)そうなんですよ。官僚たちは、最初から裏切るつもりだったんですね。

(矢部)(鳩山さんは)以前のインタビューで、この時、外務省・防衛省の幹部たちは首相・鳩山ではない何か他の者に忠誠を誓っていた」という発言をしていらっしゃるんですが。

(鳩山)私に忠誠を誓わなかったということは、誰か他にそうした人がいるんでしょう。役所かもしれない。外務省や防衛相は、全体が対米従属という方向に完全に傾いている役所ですから。アメリカの意向を必要以上に気にして、アメリカと緊密な連絡を取って、彼らの機嫌を損ねないようにしないといかんと思い過ぎているきらいが(役所には)ありますよね。
私はオバマ大統領とも、あれは2009年の10月だったかと思いますけれども、官邸で議論をして、また公邸で食事をとりながら、やっぱり「政権が変わったんだから、すべて前の政権の方針を踏襲する必要はないよ」という意向を伝え聞いたもんですから、これならそれなりに柔軟にできるなと。だから、「最終的には(前政権とは違う鳩山政権としての結論を出すから)私を信じてくれ」と、そういう意味で「trust me」と言ったら、またそれがメディアに曲解されて、「最後は普天間基地の移設先は辺野古に決着させるから、信じてくれ」という意味だったというように報道されて、どんどん私の発言の真意が曲げられていってしまいました。

(高野)あの時覚えているのは、それまで(前政権下では)インド洋へ自衛隊の給油部隊が派遣されて、アメリカの艦船に給油していた。それが政権が変わって、「(鳩山政権では)もう、それはやりませんよ」と言ったら、アメリカは「ああそうですか」って言って了承した。「ああ、こういうこともあるんだ(きちんと日本のトップが意思を示せば、米国が承諾することもあるんだ)」と僕は非常にびっくりしたんだけど、あの鳩山政権の成果に対するマスコミの取り上げ方は非常に静かだったですね。(鳩山政権の功績をもっと大きく)評価しても良いのに、沈黙ですよ。
だから、普天間基地だって沖縄県外に移設できる可能性もあると思っていたんですけどね。オバマ大統領が言う通りで、政権が変わったら、今までとまったく同じである必要はないと・・・。

(鳩山)オバマ大統領自身がそう(「チェンジ」というキャッチフレーズを掲げて登場した人)ですよね。

(高野)そうじゃなきゃアメリカの大統領なんて成り立たないですからね。

(矢部)そうですよね。だから、この時に何かわけの分からない力によって鳩山政権が不当につぶされたということだけは、皆分かったわけです。(鳩山さん以外の)他の政治家たちはもっと手前で、裏で手を握って、うやむやのうちに処理してしまう。ところが鳩山さんは、真正面からクラッシュしてつぶれた。
つまり、特筆すべきは、その後、鳩山さんがちゃんと発言されているところです。これは日本の政治家の中で初めてだと思います。クラッシュした後に、対米従属の問題と高級官僚の裏切りの問題について、ちゃんと発言されている。だから、我々もそういうことを研究できるし、いろいろな人間がそれを調べようと思った。それで私も、怒りに任せて「ふざけるな」という気持ちで、沖縄の米軍基地を調べ始めた。
だいたい普天間の県内の移設先である「辺野古」という地名は、鳩山さんがテーブルに乗せるまで、本土の人間は誰も知らなかった。だから基地問題をちゃんとテーブルに乗せたということで、鳩山さんの評価は沖縄では非常に高い。

(鳩山)オリバー・ストーンが日本に来た時に、「ひょっとして、オバマ大統領は辺野古をご存知でしょうか」って聞いたら、「たぶん知らないんじゃないですか」と。だから、そのぐらいの話だと思うんですよ。「とにかく(日本としてのきちんとした)結論を出してくれれば良い」と。「細かいことは任せるから。とにかく結論だけしっかり出してくれ」っていう話だったと思うんです。だから、(米軍基地の移転先を辺野古にこだわらず県外で)もっと変えてもオバマ大統領自身は、それほど問題にしなかったように思います。

(矢部)だから、単純に「アメリカに鳩山政権がつぶされた」という言い方は間違いだと思うんですよね。沖縄を調べると、そのことが見えてきた。
先程ふれたように、沖縄という島は不思議なところで、米軍基地の横には必ずこういう、

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沖縄の普天間基地を眺められるポイント

 

(矢部)それを監視できるようなポイントがある。この図の左上の嘉数高台公園からは、普天間基地が丸見えになる。その下の「ドライブイン嘉手納」というのは、嘉手納という一番大きな米軍の空軍基地の横にドライブインがある。

(高野)真横ですよね。国道はさんですぐフェンスがあってね。丸見えですよね。

(矢部)その4階にテラスがあって、「さあ、ここから基地を撮影しろ」っていうような場所なんですよね。その右上が、嘉手納空軍基地の北側にある、嘉手納弾薬庫という非常に重要な基地が丸見えになる展望タワーです。この上に上ると「このタワーは自然を観察するために建てた」とか書いてあるんだけど、どう考えても基地が丸見えで、そのために建てたとしか思えない(笑)。そういう施設がいろんな場所にある。

(鳩山)これは?

(矢部)これは平敷屋(へしきや)公園といって、一時、普天間の移設先の候補にもなっていた「ホワイトビーチ」という海軍基地が丸見えになる公園です。沖縄の人たちはそういうところからずっと、危険施設である米軍基地を監視してきたわけです。

新しい米軍基地を建設予定の辺野古の海

 

(矢部)次が、これは普天間基地の移設という名目の下で、新しい米軍基地が建設されようとしている辺野古です。本当にきれいな海です。次の写真も本当にきれいですよね。この海でカヌーをこいでいると、ものすごく気持ちが良いんです。そういう世界有数といわれる自国の美しい海岸に、自分たちの税金で外国軍基地を建設しようとしているわけです。このことのおかしさに、少し立ち止まって考えたら絶対に気づくはずです。自然破壊という点だけをとっても、世界的には許されないことなんですけど。

(鳩山)ジュゴンの話もね、訴訟がアメリカの方で起きているでしょう。

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辺野古に棲息する絶滅危惧種ジュゴンを守る運動と訴訟
※資料提供:北限のジュゴン調査チーム・ザン(2014年6月)
オレンジ色の箇所=辺野古埋立予定地/◎=ジュゴンの食み跡

 

(高野)そうですね、ジュゴン訴訟っていうのがありまして。日本で政府相手の裁判は必ず負けるんですが、アメリカでは違う。そこでサンフランシスコですか、連邦地裁にアメリカ人の環境弁護士と組んで訴訟をして、一旦は勝っているわけですよね。アメリカの環境法というのはとにかく厳しいから、「環境に被害を与える」という風に言われたら、連邦政府の機関だろうと何だろうと、一切フリーズされてしまう(許されない)という。オスプレイだって、ハワイの基地で演習しようとしたら、「爆風でカメハメハ大王の墓地が崩れる危険があるから」という理由で、オスプレイ配備できなかったんですからね。

(矢部)伊波洋一さんという普天間の宜野湾市の元市長の方がいつもおっしゃっていますが、「アメリカは、人間への影響に関しては、米軍基地のもたらす被害を議論することはない」と。アメリカは、(人権よりも優先して)今おっしゃった遺跡とか、コウモリの生態系に影響があるという(環境問題などの)理由なら、米軍の演習を止めたりすることはあるわけですよね。

(高野)米軍基地っていうのは、日本においては完全な治外法権で、米国の領土だという位置づけですから。だったら、日本においても、米国の国内法と同じ基準をきちんと適用しろという風に思いますけどね。

(鳩山)アメリカのコウモリの方が日本人よりも権利を守られている。

(矢部)それが冗談のレベルの話ではないということで。そのことをきちんと世界に向かってアピールしていかないといけないということですよね。

(鳩山)私は、辺野古に何回か行きましたけれど、最近行った時もジュゴンが餌であるアマモを食べた跡を見せていただきました。

(矢部)あれがまた緊迫した時に来たりするんですよ(笑)。

辺野古の美しい海を泳ぐジュゴン
※資料提供:北限のジュゴン調査チーム・ザン

 

(高野)ジュゴンはオーストラリアの北側から黒潮にのって来る、その一番北限が辺野古の海ですからね。後は横にも広がって、インド洋方面にも生息地があるんですけれども。その世界的に貴重なジュゴンの北限の環境豊かな海をですね、まさか東京ドーム何十杯分の砂利をぶち込んで埋めちゃうっていうわけでしょ。それだけ考えてもダメだと思うんですけどね。

(矢部)現地に行ったらそれは誰でも一目で分かりますからね。

(鳩山)行かないから分からないですけどね、行けば分かりますよね。

(矢部)そういう「日本人よりもコウモリの方が尊重されているのはなぜか」という問題が、今回調べて分かったわけなんですけど・・・。