日本国憲法を機能停止にしている日米合同委員会と、その起源

日本国憲法を機能停止にしている日米合同委員会と、その起源

 

(鳩山)皆さん、こんばんは。UIチャンネルの時間がやってまいりました。今回は81回目の放送ということで(前回の)80回目に引き続き、矢部宏治さんにお話を伺いたいと思います。
最近、『日本は、なぜ「基地」と「原発」を止められないのか』という非常に衝撃的な本を出されました。前回も申し上げましたけれども、この本が1,000万部売れたら、この国が変わると思っております・・・(笑)。

001
『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』

 

(矢部)(2014年12月15日時点)現在5万部なので(笑)、まだだいぶ・・・。

(鳩山)もうすぐです。頑張っていただきたいと思っております。
前回の放送を若干復習いたしますと、(沖縄には米軍基地が集中し過ぎているため、非常に危険な)普天間基地の移設先を、私が「米軍基地はできれば海外へ、最低でも(沖縄)県外へ」と言った。そして、我々が政権をとる前に決定されていた「沖縄県内の辺野古への移設ではダメだ」と主張していました。しかし、それが結局、今では、元(沖縄県内の辺野古移設案)に戻されてしまった。それはなぜか。一つは私自身の力不足があったわけですが、その背後も解き明かそうという、謎解きの試みがその頃からなされていたということです。
また一方では、4年前の3.11、あの原発の未曾有の大事故があって、

多くの国民の皆様は、「二度と原発は動かしてはならない」という思いがあるにもかかわらず、原発再稼働の方に政府は動いて行ってしまう。そこで、「基地と原発、どちらもおかしいじゃないか」と、「何で止められないのか」ということで、矢部さんが謎解きの旅をして、突き止めてくださったのが、『日米合同委員会』。アメリカ軍と日本の高級官僚との間で、月に2度、総理だった私も知らないところで、そうした謎の会議が開かれていたということです。

日米合同委員会の組織図(拡大図はこちら)

 

(鳩山)その会議というものは秘密に行なわれて、資料も基本的に外に出ない。しかし、そこで決まったものは、実は我々の(日本国の)法律の上にある。

(矢部)(日本国)憲法を超える存在です。

砂川判決以降の日本の法体系

 

(鳩山)(日本国)憲法をも超える存在になっていると。砂川事件の1959年の最高裁判決で「『安保条約のごとき』高度な政治性を有するものに関しては、最高裁は判断しない」ということになっているので。

046
砂川町の米軍立川基地拡張に対する反対派住民と警察機動隊との衝突

 

(鳩山)結局、最高裁は役に立たないということになり、すなわち、『日米合同委員会』でできた様々な合意事項が、現実として日本の法律よりも強い効力を持っていると。だから、基地も止められないと。原発も(同様に)止められない仕組みがあるんだということでございます。
日本にはそうした非常に大きな構造的な問題がある。今日はその構造を解き明かしていこうということでございます。

(高野)ある意味で日本の戦後史というのは、表面上は憲法法体系というものがこの国を支配して、我々はその下で護憲だの改憲だのということを争ってきた。だけど、本当に争っているのは表にある憲法法体系と、その裏か上にある安保法体系という別の法体系。その両者のせめぎ合いの歴史だったんでしょうね。そして安倍政権になって、さらに憲法法体系そのものをないがしろにして、明文的にも変え、安保法体系に合わせようとしている。「集団的自衛権」を突破口にして(註:安倍政権は2014年に一定の要件のもとで「集団的自衛権」の行使を容認する閣議決定を行なった)安保法体系を裏の存在ではなく表の存在にしてしまおうというところまで来てしまった。それは一つには、護憲派と言ってきた、戦後の革新勢力が衰退し、ほとんど消滅しかかっているという政治状況とも関連があるように思います。

(鳩山)そこで、ぜひ謎解きを。第2部をお願いします。

(矢部)前回、『日米合同委員会』のことについてお話しましたけれども、この組織の起源について申し上げます。これは獨協大学の小関彰一さんが研究されたことですけれども、サンフランシスコ講和条約(1951年調印)を議論する過程で、アメリカから(国務省顧問)ダレスという人間が来て、吉田元首相などと交渉しますよね。その中で、アメリカ側は「日本を再軍備させて、米軍の指揮下に置きたい」という条約案を出している。でも日本としては、その時に既に戦力を放棄するとした日本国憲法 第九条2項がありましたので、(日本)国民には絶対そういう交渉の事実はオープンにできない。
ということで、これが最初期の密約になるわけですけれども、そのことは条約には書かない。そういう統一指揮権のような、日本人に見せられない合意事項は、『日米合同委員会』で協議(して極秘事項と)するということにしておくようにした。

(高野)それが『日米合同委員会』の起源ですか。

(矢部)そうです。そしてその後、口頭で密約を交わし、それを文書化して記録した。だから、統一指揮権はまだあるわけです。「米軍が有事と判断した時点で、自衛隊は米軍の指揮下に入る」という密約があって、それはまだ破棄されていませんから、残っていると考えられます。そうした「日本人には見せられない合意事項を、協議するふりをしながら運用していく」ための機関として作られたのが『日米合同委員会』の起源です。
そういう状況の中で、日本のリベラル派が「日本国憲法に指一本触れるな」と言ってきたことには、非常に合理性があった。指一本触れると再軍備させられて、米軍の指揮下に入ることは確実でしたから、「指一本触れるな」ということで、それを食い止めてきたということには意味があったし、私もそのことに関しては敬意を払っているんです。
しかし、それが60年以上続いてしまって、そもそもの経緯も分からなくなっている。しかも、安倍政権によって、その防衛ラインはもう突破されてしまったわけです。
統一指揮権の密約を残したまま、「集団的自衛権」を認めた。これは何を意味するかというと、「個別的自衛権」の軍事行動は国内だけですから、国内有事の場合に自衛隊は米軍の指揮下に入る。しかし、「『集団的自衛権』を統一指揮権密約の下で認めてしまうと、米軍が有事と判断したら世界中の戦争に自動的に参加させられる」という風に類推できるわけですね。それが今回の安倍さんの決定の本質なんじゃないかと。
言葉は悪いんですけれども、憲法の本質論と戦術論というのがあって、我々生きている人間にとっては戦術論は大事ですから、それで食い止めてきたということはある。しかし、その中で本質論と歴史的事実がおろそかにされ、議論のベースがなくなっている。

(高野)そうですね。何か(本質論と歴史的事実の方は)神棚に飾っちゃって、拝んでいるみたいになって。

(矢部)一時的に政治的フィクションを作って、戦術論で戦うというのはもちろんあると思うけれども、やっぱりそれはマックス30年くらいで、アメリカは30年経ったら公文書を公開するわけですよね。それを(日本の方は歴史的事実をおろそかにしたまま)60年続けてしまったことの弊害は非常に大きい。

(鳩山)その辺のところがベールに包まれて、なかなか国民が真実を知ろうとしないというのは、天皇制の問題が絡んでいるのではないかなと思います。

(矢部)天皇制の問題は大きい。

(鳩山)やはり天皇制は守らなきゃいけないと、私もそう思っておりますから、そういう判断の中で譲らなければならないこともあった。日本国憲法の問題もそれに絡んでいると思います。そこで、日本国憲法が機能していない状態を構造的に分析をしていただきたい。